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映画を完全に楽しむ、エンドロールから削除シーンまで

破壊屋ギッチョ
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「映画を完全に楽しむ、エンドロールから削除シーンまで」。ギッチョさんが書かれたこの記事では、映画鑑賞テクニックへの偏愛を語っていただきました!

皆さん、こんにちは。私は2000年から続いている映画サイトの管理人です。前回のこの世にクソ映画なんてない。どんな映画も絶対に楽しめる映画鑑賞のテクニックに引き続き、どんな映画でも(例え駄作でも!)楽しめるようになる、映画鑑賞テクニックをご紹介します。今回は映画を完全に楽しむためにエンドロールから削除シーンまでの楽しみ方をお伝えします。

映画のエンドロールを最後まで観るか?

映画のエンドロールを最後まで観るか論争、というのがあります。ネット上ではもう何回も繰り返されている議論です。私としてはどちらでも良いです。つまりエンドロールを見ずに映画館から出ても全く問題ないという考え方。エンドロールをじっくり楽しみたい観客にとっては、途中帰宅する観客は邪魔になってしまうのでマナー違反と言えます。とはいえ、ただの文字列を何分も見続けろ!というのは強制できないでしょう。

でも実は私はエンドロールマニアなのです。今回はいろんな映画の特殊なエンドロールを紹介します。

後日談があるエンドロール

エンドロール中に後日談が流れるというパターンがあります。一番有名なのは『となりのトトロ』でしょうか。エンドロールで母親が退院して家族一緒になることが分かる、最高に幸せな気分になれるエンドロールです。

センスが良いのは、滅びゆく人類を描いた『トゥモロー・ワールド(2006)』。劇中では人類が滅亡するのか復活するのかハッキリと描かれないのですが、エンドロールで「ある音」が流れるので、それで滅亡か復活かどちらかが分かります。ハッキリと画面に描くと陳腐になってしまうので、音で表現したのです。

爆笑できるのは『オースティン・パワーズ:デラックス』です。劇中で倒された悪役の息子がバラエティ番組に出演して親について語るという後日談が流れます。『となりのトトロ』ほどではありませんが、意外と感動できます。

エンドロール後にも本編がある!

アメコミ映画やフランチャイズ映画(シリーズ映画のことです)が大流行した結果、エンドロール後にも続きがあるのは、すっかり当たり前になっています。が、以前は「エンドロール後にも本編がある」は日本映画のほうが多かったんですね。エンドロールを最後まで観る、というのは日本独自の風習なので日本映画のほうが「仕掛けやすい」のです。

有名なのは『魔女の宅急便(1989)』でしょうか。エンドロール後にキキが両親に手紙を送って「落ち込むこともあるけれど、私、この街が好きです」と伝えるのは屈指の名シーンです。

壮大な三部作だった『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗(2009)』ではエンドロール後も10分ほど本編が続くのが衝撃的でした。ネット上ではこの10分間を考察するサイトが沢山ありますね。

このパターンで最も凄まじいのは水野晴郎のミステリー映画『シベリア超特急(1996)』です。エンドロール後の本編が何と15分も続く上に、その内容がどんでん返しの連続。「このどんでん返しは、一体いつになったら終わるのか?」という不安な感覚に陥ります。他の映画には存在しない唯一無二の感覚なので、是非とも皆さんに『シベリア超特急』を味わって欲しいです。

凝っているエンドロール

エンドロールでもきちんとアートワークを作り込んでいる映画は嬉しいですね。特にアメコミ映画のエンドロールは非常に凝っています。印象深いエンドロールはホラー映画の『エスター(2009)』です。劇中の悪魔のような少女エスターが書いた蛍光色の不気味な絵がエンドロールに映し出されて、かなり怖いです。

ピクサーの映画では、エンドロールでは2次元アニメが流れるのが定番です。『Mr.インクレディブル(2004)』や『レミーのおいしいレストラン(2007)』のエンドロールは非常に出来が良いです。数々の3次元アニメの傑作を作り続けてきたピクサーが最後に2次元アニメにこだわりを見せてくれるのが嬉しいですね。

特に傑作なのは『ウォーリー(2008)』です。エンドロールで「その後の世界」の様子が描かれるのですが、その画風がエジプトの壁画風、木炭画風、ゴッホ風など絵の歴史を辿って行き、最終的にはファミコン風のイラストになるのです。

現実が侵食するエンドロール

もっとも特殊なエンドロールは現実とフィクションが混じり合うパターンです。どういうことかと言いますと『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟(2006)』ではエンドロールで歴代のウルトラマンたちとお年を召されたかつてのウルトラ警備隊のメンバーたちが、ホテルで立食パーティーをやっている!実際に開催された「ウルトラマン40周年パーティー」の映像をエンドロールに使ったのです。ウルトラマンたちはタキシードを着ており、最後にはズラリと並んだウルトラマンたちが花束贈呈を受ける。シュールすぎるエンドロールです。

歌手の高橋ジョージが監督・原案・脚本・編集・音楽・主演を務めた『LUCKY LODESTONE(1999)』も凄いです。この映画は2007年に『ラッキー・ ロードストーン ディレクターズカット版』が作られるのですが、そのエンドロールが何と高橋ジョージと三船美佳の実際の結婚パーティーの映像!映画の内容自体は高橋ジョージと三船美佳のロードムービーなので、ラストが結婚パーティーなのは一応辻褄が合っているところが逆に恐ろしい。

最後に、映画史上もっとも有名なエンドロールとも言える香港映画の『群狼大戦(1990)』を紹介します。この映画のクライマックスは、ビルが爆破されて窓からヒロインたちが飛び降りるというド派手なスタントです。ところが火薬が多すぎ&女優が飛び降りに戸惑ってしまい撮影失敗。ヒロインの女優二人が爆炎に巻き込まれて全身大火傷を追ってしまいます(整形手術を受けて後に復帰)。映画本編は女優が爆炎に巻き込まれた時点でいきなり終了。エンドロールでは事故や女優の容態を報じた当時の新聞記事が映し出されるというもの。「俺はエンドロールなんて最後まで観ないよ!」という人でも絶対に最後まで観続けてしまう究極のエンドロールです。

DVDの特典を楽しむ!

まだまだ紹介したいエンドロールが沢山あるのですが、それは別の機会にしてちょっと話題を切り替えます。皆さんの身近な映画鑑賞の方法は何でしょうか?若い世代でしたらDVD鑑賞に慣れていると思います。子供の頃の思い出のDVD映画などを持っているのではないでしょうか?

DVDは売上を伸ばすために、特典映像をこれでもか!と付けてくれます。その中には貴重な情報や本編以上の面白さが詰まっています。今回はそんな特典映像の面白さを紹介します。

オーディオコメンタリーで観よう!

DVDでの鑑賞方法で楽しいのがオーディオコメンタリーです。映画のキャストやスタッフの解説を聞きながら、映画を再生できるのです。YOUTUBEやTikTokの映画解説も楽しいと思いますが、オーディオコメンタリーはそれよりも贅沢な楽しみ方です。

世間で評判が高いオーディオコメンタリーは、やはり大物俳優や大物監督の解説が聴けるタイプのオーディオコメンタリーです。が、ヲトナ基地ではちょっと別の視点からオススメのオーディオコメンタリーをご紹介しようと思います。私は傑作映画のオーディオコメンタリーよりも、評判悪い映画のオーディオコメンタリーのほうが好きなんですね。どんな駄作でも作り手たちは一生懸命作っていて、その想いが伝わって駄作でも好きになれるからです。

若い女優たちの本音が分かる

『恋するミニスカウェポン(2004)』という映画があります。ちょっと刺激的な感じがする映画ですが、内容は超カワイイ系。女子大生たちのスパイ組織が悪の組織と戦う!と宣伝されてますが全然違います。何せ悪の組織の活動内容は、女ボスがレズビアンなので女性とのマッチングをサポートすること!悪の組織どころか単なる恋の応援団です。そんな女ボスが敵であるはずの女子大生スパイに恋してしまい…という日本のWebマンガにありそうな百合設定をハリウッドは既に20年前に実写で実現していたのです。

この映画は公開時には『チャーリーズ・エンジェル』のようなセクシーアクションを期待した男性からは叩かれましたが、女性には根強いファンが多い映画です。

そんな賛否両論映画のオーディオコメンタリーで何が語られているかというと…。女優たちは自分の髪型と画面写りを気にしているだけ!あとは脇役のイケメン俳優から誘われてデートに行ったとか、そういう話ばっかりです。日本でも数年前まではアイドルのドキュメンタリー映画が大量に作られてましたが、彼女たちは「アイドルとしての言葉」を選んで語っているだけで、本音とは言い難い。それに対して『恋するミニスカウェポン』のオーディオコメンタリーにはガチの本音しかありません。でも日本のアイドル映画で共演者とのデート話なんてしたらファンたちは大炎上すると思う。

失敗シーンを監督が謝罪する

オーディオコメンタリーで面白いのは酷いシーンがあると、関係者がアッサリ謝罪するところですね。『ワイルド・ワイルド・ウエスト(1999)』は、主演がウィル・スミス、監督はバリー・ソネンフェルド。つまり『M.I.B』コンビの二人です。『ワイルド・ワイルド・ウエスト』はアメリカではとにかく嫌われていて最悪映画賞であるゴールデンラズベリー賞を5部門も受賞した映画ですが、駄作というわけではありません。面白いシーンがたくさんある意欲作です。

ただ観客に嫌われる悪趣味なシーンもたくさんあったのですね。特に醜悪なのはクライマックスで女装したウィル・スミスがおっぱいから出てくる火炎放射器で戦うシーン。自分で文章を書いて表現しても恥ずかしいレベルですが、監督はそれ以上に恥ずかしい思いを抱えています。どうやらプロデューサーの指示で不本意ながら撮影したシーンらしく、オーディオコメンタリーでは監督が延々と自己批判します。

「とにかく撮り終えましたが、その後も悩み続けました。」

「後の祭りです。」

「この映画を選んだことを後悔している人もいるでしょう」

「このシーンはあと少しで終わります」

「エキストラの緊張感も無い最悪のシーンです」

などと愚痴りまくり。確かにシーン自体はつまらないですが、監督のオーディオコメンタリーを聞きながらだと爆笑できます。

ワイルド・スピードにケンカを売ったと思ったら…

『トルク(2004)』というバイク映画があります。公開当時は「史上最悪の映画」とまで呼ばれてアメリカで大炎上したのですが、現在ではカルト的な人気を誇る映画です。私も「隠れた傑作映画を教えて欲しい」と言われたら、迷わずこの作品を紹介しています。そんな傑作が公開当時に大炎上してしまった理由の一つが、この映画が『ワイルド・スピード』シリーズを笑いものにしているから。この映画のコンセプトが「ワイルド・スピードを茶化す」なんです。劇中では『ワイルド・スピード』シリーズの決めセリフを笑いものにしたり、カーアクションよりもバイクアクションのほうが優れているということをやたら強調してきます。

オーディオコメンタリーでも、俳優たちが『ワイルド・スピード』ネタを解説してくれます。最高に爆笑できるのは、映画『トルク』劇中の情けないやられ役に『ワイルド・スピード』シリーズの主人公のヴィン・ディーゼルのソックリさんが出てくるシーン。オーディオコメンタリーの俳優たちがヴィン・ディーゼルのソックリさんにゲラゲラ笑っているときに、俳優の一人が「俺、ヴィン・ディーゼルさんと共演したことあるんだけど…」と気まずい告白をしてくれます。

未公開シーンを観よう!

映画への理解が深まる方法としてオススメなのが、未公開シーンです。ハリウッド映画は全体のテンポというものを非常に重視しています。そのために超重要シーンでもテンポが悪くなると判断したらアッサリとカットするのです。またハリウッド映画は複数のラストシーンを撮影して、テスト試写で一番評判良いものを採用したりします。そのため未公開シーンを観ると「この映画が本当に描きたかったもの」が良く分かるのです。ここでは私が今までで驚いた未公開シーンをご紹介します。

タイトルの意味はそうだったのか!『ダイ・ハード3』

誰もが知る人気シリーズ『ダイ・ハード』でも衝撃の未公開シーンがあります。それは『ダイ・ハード3(1995)』です。原題は『Die Hard: With a Vengeance』で「With a Vengeance」は「猛烈に」という意味と「復讐編」という2つの意味があります。『ダイ・ハード』の第一作で出てきた悪玉(演じるのはスネイプ先生で有名なアラン・リックマン)の兄が、主人公ジョン・マクレーンに高度なナゾナゾゲームで挑戦してくる!という内容です。でも映画を観た人にはお分かりだと思いますが「復讐」がまったく関係ないんですよね。兄の動機は復讐でも何でもない。劇場公開時でも「復讐の意味がない」という批判が多くありました。しかし、この謎はDVDについていた未公開シーンによって解けます。実は本当のラストシーンだと悪玉の兄は逃亡に成功し、主人公は刑事をクビになってしまう。そして主人公は悪玉の兄に復讐するためにナゾナゾゲームを仕掛ける!というダイ・ハードらしからぬ終わり方。「復讐」というのは実は主人公の行動を表現したタイトルだったのです。

クライマックスが全然違う!『バレット・モンク』

『ダイ・ハード3』のラストに未公開シーンがある。というのは有名なエピソードで知っている人も多いかもしれません。せっかくなのでヲトナ基地では誰も知らない削除シーンについても紹介しましょう。

『バレット・モンク』は2003年のハリウッドのアクション映画で、キャッチコピーは「そこの坊主、まるで弾丸!」。主人公はチョウ・ユンファ演じるチベットの超強い修行僧。彼は不老不死の巻物を守っており、第二次世界大戦中から現在に至るまでナチスの襲撃から巻物を守っています。クライマックスはもちろん修行僧とナチスの戦いです。が、DVDのオマケについている未公開シーンを観ると…ニューヨークのギャングの若者たちが修行僧たちと一緒に戦うという展開なんです。実はこの映画は現代のアメリカ人の若者たちとナチスの戦いを描くという、実にアメリカ人好みの内容だったんですね。ただテンポが悪いと判断されて全部カットされたのでしょう。若者を演じた俳優たちが可哀想です。

削除の決断が見える『Shall We Dance?』

ハリウッド版『Shall We Dance?(2004)』のDVD特典を観ると作り手の苦悩がよく分かります。劇中の俳優たちに社交ダンスを長期間トレーニングしてもらって、セットを組んで、見事なダンスシーンを実際に撮影する。そんな素晴らしいシーンを本編には採用せずにカットしているのです。少しでも映画を面白くするための苦渋の判断でしょう。実際、ハリウッド版は日本版よりも短くコンパクトにまとまっていて観やすいです。

意外だったのは削除された「本当のオープニング」で、その内容はリチャード・ギアが通勤しながらジョークを飛ばし続けるというもの。さらにジョークを盛り上げるド派手なダンスシーンも撮影済みで、ミュージカル映画っぽい陽気な始まり方のはずでした。しかし最終的には日本版と同じようにオープニングは社会人の暗い日常を描いたしんみりとした導入になっています。

DVDの特典映像でリチャード・ギアや監督は日本版『Shall we ダンス?』との差別化の苦労を語ります。日本版『Shall we ダンス?』が完璧すぎて、手を入れにくかったとのこと。このようにDVD特典は作り手の苦悩も共有できるのです。

最後に

「映画のエンドロールを最後まで観るか論争」と書きましたが、私は映画の見方は自由だと思っていて、途中でやめても、自宅でながら見でも、早送り機能を使っても、解説動画だけで満足しても、構わないと思っています。それが現代的な映画鑑賞スタイルです。でも一本の映画をとことん味わうのも、オススメの鑑賞方法ですよ。

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