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成人男性が「美少女戦士セーラームーン」にハマって、魂の額に三日月の刻印を刻まれるまで

かんそう
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「成人男性が「美少女戦士セーラームーン」にハマって、魂の額に三日月の刻印を刻まれるまで」。かんそうさんが書かれたこの記事では、アニメ『美味しんぼ』への偏愛を語っていただきました!)

今回は、『美少女戦士セーラームーン』にハマった成人男性の末路をお伝えします。齢30超えてセーラームーンにどハマリしてしまった‥‥‥。

ある情報によればここ数年、セーラームーンにハマる男どもが続出しているらしい。乃木坂46によるセーラームーンミュージカルの公演(2018年 ・ 2019年再演・2024年再演)が大きな理由の一つと言われていますが、俺はまったく違うルートからセーラームーンの魔力に取り憑かれてしまいました。

忘れもしない6年前の2月、映画『美少女戦士セーラームーンR』(1993年公開)を偶然観たことがキッカケでした。それまでの俺は「セーラームーン?笑止」と、どこかセーラームーンに対し穿った印象を持っていました。

しかし、映画を観終わった瞬間、あまりの面白さと感動に膝からだらしなく崩れ落ち、大粒の涙を流しながら「月の光は愛のメッセージ……月の光は愛のメッセージ……」と呟くだけの化物になってしまいました。

セーラー戦士全員をもれなく好きになってしまう唯一無二のキャラクター性と、「愛と友情」という普遍的なメッセージを真正面から描く、ファンだけでなく初見でも楽しめるストーリー。そしてそれを支える過感情を揺さぶられる劇伴、たった60分弱の上映時間に文字通り「全て」が詰まっていたのです。

日本アニメ映画における最高傑作のひとつ

特に俺が心臓をブチ抜かれたのが終盤、セーラームーンが敵であるフィオレに「地球かセーラー戦士4人かどちらかの命を選べ」という究極の選択を投げつけられてしまう。そしてフィオレは冷たくこう言い放つ。

「この世に生まれたことを不幸だと感じたことのないお前たちになにが分かる。仲間が、友達のいない寂しさがお前たちに分かるか。誰にも理解されないものの寂しさが分かってたまるか」

この言葉に囚われていた4人が反応する。セーラーマーキュリー(亜美)は頭の良さを周りから疎まれ、セーラージュピター(まこと)はその腕力の強さを怖がられ、セーラーヴィーナス(美奈子)はセーラーVとして1人で戦ってきたことを好奇の目で見られ、セーラーマーズ(レイ)は霊感の強さを気味悪がられてきた…。

そう、いつも明るく振る舞っていたセーラー戦士たちにはそれぞれの孤独、それぞれの地獄を抱えて生きてきたという過去があった…。しかし、そんな孤独から救ってくれたのが、他の誰でもないセーラームーン・月野うさぎ、だった…。

うさぎは、ドジでおっちょこちょい、頭も要領も良くはない。しかし、周囲を元気にする太陽のような明るさ、そして誰に対しても偏見なく接する優しさを持っていた…。

勉強ばかりしている亜美に「遊ぶ時はちゃんと遊ばないとダメでしょ!」と真剣に怒ってくれるうさぎ…神社で巫女として仕えるレイに「レイちゃんってがんばり屋さんなんだ!」と心から尊敬するうさぎ…周囲から恐れられてきたまことに話しかけ「あんた、あたしが怖くないの?」と言われても「へ?なんで?」とあっけらかんとするうさぎ…セーラーVとして一人戦っていた美奈子に「カンドー!憧れのセーラーVちゃんが目の前にいるなんて!」と目を輝かせるうさぎ…。

うさぎの何気ない一言に、行動に、どれだけ4人が救われてきたか……。ただ、敵を倒せるとか、戦いに勝てるとかそういうことじゃない。これがセーラームーンの真の「強さ」…。

ということが、うさぎのフルネームすら知らなかった俺に一発で理解(わか)らせられました。間違いなく、日本アニメ映画における「最高傑作」と断言できる作品のひとつ。セーラームーンを舐めていた過去の自分を殴りたい。泡を吹いて気絶するまで月にお仕置きしてほしい。

みたいな内容を鑑賞後に速攻で自分のブログにしたため旧ツイッターに投げたところ、セーラーウラヌスの声優を務める緒方恵美先生にリツイートされてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。ウラヌス様の必殺技ワールド・シェイキングで跡形も無くなりたい。

それからというもの、しばらくセーラームーンのことしか考えられない日々を送ってきました。アニメ版はもちろん、原作漫画も全てコンプリート、主題歌は全曲ダウンロードし歌詞を丸暗記。2022年には東京六本木で行われた「セーラームーンミュージアム」にわざわざ現住所の北海道から行くなど、自分でも信じられないほどセーラームーンにのめり込んでいったのです。「地球」の読み仮名は完全に「くに」になってしまいました。

本当に知れば知るほどにブラックホールのような引力がセーラームーンにはありました。初期アニメ、リメイク、映画、原作版、実写と、同じセーラームーン作品にもかかわらず、それぞれまったく違う魅力のある映像作品、一度聴いたら二度と忘れることができない楽曲群、多角的に展開されたグッズの豊富さ、とハマる要素がまさに「星の数ほど」あるのです。

そんなセーラームーンの魅力をここで今さら語るのもアホらしいですが、あえて言わせてもらうと私が最も心を狂わされた要素は

「俺のことマジで1ミリも眼中にない」

セーラームーンはいつだって「女の子」のためだけに存在している

俺が最も好きなシーンを紹介させてください。コミックス9巻 Act.59。今までにない強大な敵・シャドウ・ギャラクティカによってセーラージュピターもセーラーマーキュリーもやられてしまった。セーラーマーズ(火野レイ)と、セーラーヴィーナス(愛野美奈子)は心が折れそうになりながらも、その決意を新たにする。

レイ「わかるの、いままでの戦いとは違う。今度こそ帰っては…」

美奈子「ストップ!誓ったよね、二人を助け出すって。あたしたちはいつだって同じ。仲間を助け!敵をたおし!たいせつな人を守る!今度も同じ!そして、かならず生きてここへ帰ってくる!そして高校生活へ復帰して!今度こそカレシをつくるっっ!!これでキマリッ!!やっぱオトコよっ♡中学んトキもけっきょく一人もできなかったし…そんなヒマなかったしー、だからこそ今度こそスリーライツみたいなかあっこいい♡ダーリンをつくるのっ!もちろんキープくんも!!そんでもって思いっきりデートしまくっていちゃいちゃしまくって、フツーの女子高生するのよっっっっ、あたしたちの究極の夢ッッ!やっぱこれしかないでしょーーっ!!」

?「うそばっかり」

バッ!

夜天光「もう心にきめた人がいるクセに」

夜天光「その人のために生きるって決めてるクセに」

美奈子「……ばれちゃあ……しょーがないわね」

美奈子「そうよ。もうとっくにあたしには、命をささげたたった一人の人がいるわ」

(美奈子……!)

レイ「……そうよ。だからわたしたち、男なんかおよびじゃないのよ。わるい?」

美奈子が言った「命をささげたたった一人の人」とはセーラームーン(プリンセス)のことなんですが、恋に憧れる普通の女の子でありながら、同時に戦いの宿命を背負ったセーラー戦士である2人の覚悟、そしてどれだけセーラームーンのことを大切に思っているかが、伝わる最高のシーンです。このシーンを読んだ時、あまりの眩しさに両目が焼かれ黒目に三日月のマークが刻印されてしまいました。

そう、セーラームーンはいつだって「女の子」のためだけに存在している。決してわれわれ汚い成人男性に向けられてない。それがいい。だからこそ、セーラームーンという作品は美しく、強くあり続けてくれる。本当に俺のような体毛の濃い男のことなど一生無視してくれて構わない。俺はセーラー戦士たちの視界に入らないほど遠くからアホみたいな顔して眺めていられればそれでいい…。

俺のことは「海野」と呼んでください。

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