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報われない恋が愛おしい!当て馬女子キャラクターの魅力と歴史

かんそう
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「報われない恋が愛おしい!当て馬女子キャラクターの魅力と歴史」。かんそうさんが書かれたこの記事では、当て馬女子キャラクターへの偏愛を語っていただきました!

私、普段「当て馬」の研究をすることで生計を立てている、かんそうと申します。10年運営しているブログ「kansou」では4000人以上の有識者に独自のアンケートを取り、当て馬ナンバーワンを決める当て馬ランキングを実施するなど、日本有数の当て馬研究家として日々活動しています。

当て馬とは

そもそも「当て馬」とはなんなのか。当て馬とは本来、種付けでメス馬を発情させるために使われるオス馬のことを言います。しかし、それが転じて恋愛漫画やドラマなどで、主人公と相手の絆を深めるためだけに存在する片思いキャラのことを指すようになりました。冷静に考えると、なんと失礼な言葉なのでしょうか。本来であれば、こんな言葉は使いたくはありません。しかし、この言葉以上に彼ら彼女らを表すものがないのも事実…。

そんな不名誉なレッテル「当て馬」を貼られた彼ら彼女らを少しでも伝えたい、できることならこの世から「当て馬」という言葉を消滅させたい。そんな願いをもってこの活動をしています。

中でも、私が特に愛情を注いでいるのが「当て馬女子」です。特に、

「地味な女主人公の恋のライバルとして登場し男主人公との仲をこじらせようと意地悪するもことごとく跳ね返され自身の想いが届くことなく失恋するが紆余曲折を経て最終的に親友になる「ツインテール性悪当て馬美少女キャラ」

への感情はビッグバンと言っても過言ではありません。誰もが羨むビジュアルを持ち圧倒的な異性の人気を獲得しながら、本命にだけはまるで相手にされない。それどころか「ツインテール」という髪型は「自分に自信がなければ出来ない髪型」とされているがゆえに「あなたはかわいくていいよね、なんの苦労もしないで」などとやっかみを受け、いつしか誰も頼らず誰も信用しない自分を作り上げてしまう。

だからツインテール性悪当て馬美少女キャラは、自分が傷つかないために「演じる」しかない。完璧な可愛い自分を。でも男主人公だけは、わたしをわたしとしてだけ見てくれた。弱いところも醜いところもこの人にだったらさらけ出せるかもしれない…好き…大好き…。と。でどれだけモテようがツインテール性悪当て馬美少女キャラには関係ないのです、ただ一人彼にだけ振り向いてほしかった。

でもその想いは決して報われない。それどころか、一陣の風のように現れた地味な女主人公に積み上げてきたものを全てかっさらわれてしまう。一段一段慎重に積み上げてきた恋愛ジェンガが一瞬で崩される。この気持ちが分かりますか?それは意地悪の一つや二つしたくなるでしょうが。

ツインテール性悪当て馬美少女キャラその1『君に届け』胡桃沢梅(くるみ)

ツインテール性悪当て馬美少女キャラの歴史を語るうえで、絶対に外すことできないのが漫画『君に届け』に登場する胡桃沢梅(以下、くるみ)です。くるみは物語の男主人公・風早翔太と同じ中学校の出身で、その頃から風早に片思いをしており、表では猫を被り「学校一の美少女」を演じながら、裏では風早が他の女子と近づくのを防ぐため「風早はみんなのもの協定」を発案するなど、その想いはもはや執念に近いものがありました。

女主人公・黒沼爽子に対しても、くるみは風早が爽子のことを気になってることに誰よりも早く気づきます。なぜなら風早をずっと見てきたから。風早が自分には絶対にしない顔で爽子を見ていたから。それを見つめるくるみの切ない顔を見るたびに、私は眼球が焼かれそうなほど熱を帯びるのです。

それが許せなかったくるみは、学校中に爽子の悪い噂を流したり、爽子と仲良くするフリをして風早の親友の真田龍に恋心を向けさせようと画策。しかし、そこまでしても爽子は動じませんでした。それどころか、くるみのことを許そうとするのです。結果、くるみの想いは風早に届くことはなく、勇気を出して告白するも振られてしまいます。

私は毎ページ思いました。ああ、俺が『君に届け』の登場人物だったらくるみを泣かせないのに…風早のことをぶん殴ってやるのに…と。

その後、くるみと爽子はしばらくギクシャクした関係を続けるのですが、どこまでも真っ直ぐにくるみと向き合う爽子の純粋さに触れることで、くるみの心を覆っていた固い殻は破れ、2年の時を経て、2人は「親友」と呼べるほどの仲になります。最終30巻でくるみが風早に言った、

「爽子ちゃんはわたしから風早をとったと思ったけど、ちがった。風早がわたしに爽子ちゃんをくれた」

というセリフに全てが詰まっていました。そう、『君に届け』とは黒沼爽子と風早翔太の恋愛物語であると同時に、黒沼爽子と胡桃沢梅の友情物語でもあるのです。

ツインテール性悪当て馬美少女キャラその2『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』真矢愛莉

もう一人、代表的なツインテール性悪当て馬美少女キャラを紹介します。漫画『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』に登場する真矢愛莉です。高齢の両親の一人娘として生まれ、常に甘やかされてワガママに育った愛莉はお菓子の食べすぎで歩くのにも苦労するほど太ってしまい、周囲からからかわれる日々を送っていました。

そんなある日、小学校の遠足中に足をくじいて動けなくなっているところを男主人公・晴に助けられ、それから晴のために人生を生きると決意するのです。そう、晴だけが本当の自分を見てくれた。くるみにおける風早とまったく同じ。ツインテールという一輪の花に停まった一匹の蝶。それが晴だった。

それから愛莉は、女主人公・音が自分たちの学園にふさわしくない貧乏人だと知ると晴のためにと、誹謗中傷のビラを学校中にばらまく、倉庫に閉じ込めるなど、様々な嫌がらせを決行します。しかし、その行動がやりすぎたせいで晴の怒りを買い拒絶されてしまいます。

ショックを受けた愛莉は失踪し、命の危機に瀕してしまいます。そこを晴と音に助けられたことで、心を開き2人の仲を応援するようになるのです。ワガママな性格は変わらずですが、一度心を許した音には人懐っこい猫のようなかわいさを見せます。

「言ったでしょ、友達候補にしてやるって。まあ、いつ寝首かくかわかんないわよ?油断しないこと」

そう頬を赤らめる愛莉を見て、私は「俺が一生守り抜く」と誓ったのです。何から?この世の悲しみ全てから。

このように、当て馬女子、ツインテール性悪当て馬美少女キャラはいつまでも関係を発展させない主人公たちのケツを叩くカンフル剤としての役割を完璧にこなしながら、大きな成長を見せるのが彼女たちの最大の魅力。

登場時の「なんだこのいけ好かねぇやつは?」から「俺が…俺が幸せにするよ…」へのギャップ。 「大キライ 大キライ 大キライ 大スキ」とはモーニング娘。の名曲『サマーナイトタウン』の歌詞ですが、一度「嫌い」を経て「好き」に変化した感情の強度はダイヤモンドを凌駕します。                                                                                                                                             

なぜ私がここまで当て馬女子たちに惹かれるのか、それは私自身の経験から来ています。私も恋愛に関しては決して好きな相手に振り向いてもらえない人生を送っていました。直接話しかける勇気はないが、その子の目線に入るために教室の後ろでわざと大声でふざける毎日。目の前の男友達に話しかけるフリして、その子に向かっておもしろワードを言っていたのです。

しかし、その子は振り向くどころか同じクラスの別の男と付き合いました。しかも、一人や二人ではありません。複数の男子生徒がその子と「関係」を持っていました。そう、ただの「貞操観念ガバガバ女」だったのです。グチャグチャに絡まり合った相関図。広まる噂。そしてその矢印にいっさい絡んでこない私。まぎれもなく地獄でした。

そうして、一人枕を濡らす日々を送っていた私に現れたのが、胡桃沢梅でした。境遇こそ違えど、好きな相手に自分の想いを上手く伝えられないその姿に、まるで自分自身を見ているような錯覚に陥りました。私も心の髪型はツインテールだったのです。

後先考えず相手を想い続ける一途さ、想いが強すぎるゆえにやり方を間違えてしまう不器用さ、最も身近で最も我々に近い、最も「人間臭い」キャラクターが、当て馬女子です。この記事で少しは彼女たちの魅力が伝わったでしょうか。

当て馬研究家がいま注目している当て馬女子たち

最後に、当て馬研究家の私がいま注目している漫画作品とそこに登場する当て馬女子をいくつか紹介したいと思います。

まず、一作品目は『凪のお暇』に登場する市川円。

フワフワとした雰囲気と抜群のルックスと頭脳を持ち社内一の人気と実力を誇るも、その魅力のせいで無意識に周りのコミュニティをグチャグチャにしてしまう恐ろしい女性です。主人公・凪の元彼の慎二と付き合うことになり、最初はとても良い雰囲気だったのですが少しずつ慎二の心と体を蝕んでいきます。自分ではなにも悪いことをしている自覚がないのに、好きな人に好かれないどころか、壊してしまう。そんな悲しき業を背負ったキャラクターです。

二作品目は『スキップとローファー』に登場する江頭ミカ。

今どき女子の皮を被りながら過去の出来事から自分自身に対して自信がなく、多くのコンプレックスを抱えているキャラクターです。登場時はクラスいちカッコいい男子・志摩に一目惚れをし、志摩と仲の良い主人公のみつみを「地味な子」と見下していたのですが、徐々に彼女の真っ直ぐさに惹かれ「志摩を好きな自分」と「みつみと友達でいたい自分」の間で葛藤しながら、その気持ちに少しずつ決着をつけていき、いつしかみつみと、大の仲良しと呼び合うほどの関係を築いていきます。

2人とも「当て馬」などという枠では括れないほど人間的で面白いキャラクターです。くるみ、愛莉、円、ミカ…私にとって、もはや君たちは当て馬なんかじゃない、最高の「本命人間」だよ。誰よりも幸せになってくれ。

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