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ボーカルの叫び(フェイク)が好きすぎる…

かんそう
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「ボーカルの叫び(フェイク)が好きすぎる…」。かんそうさんが書かれたこの記事では、ボーカルの叫び(フェイク)への偏愛を語っていただきました!

私はボーカルの叫び(フェイク)が好きすぎる男です。フェイクとは簡単に言うと「歌詞には表示されていない叫び声」です。

まったく予期せぬタイミングでブチ込まれる「イェーイ」や「ウォーウ」などの叫びを聴いた瞬間、私の耳と脳は沸騰し全身が溶けるような興奮に襲われます。

私が一番最初に「フェイク」というものを意識した叫びの原体験は、2000年にリリースされたロックバンド・ポルノグラフィティの代表曲「サウダージ」でした。曲終盤、ボーカル岡野昭仁が放つ、圧巻の叫びをぜひお聴きいただきたい。(3分30秒あたりから)

岡野昭仁「夜ォオオ空をォオオオ〜〜!焦ォオオがしてェェエエエ〜〜〜〜〜〜!私はァアア…!生きたわァアアアア…!恋心とオオオオオ〜〜〜〜〜〜ォオオオ……〜〜〜〜ォオオオオ…オオオ…」

新藤晴一「トゥトォワントォワン〜〜〜トゥルルル〜〜〜ティレレ〜〜〜レレ〜〜〜ェェトォワァ〜〜〜〜ァァレ〜〜〜ェン!キェレレレ〜〜〜〜トォワァントォワ〜〜ントゥルルルトォワァントォワ〜〜〜ン!トゥルントゥルントゥルントゥルントゥルルルトォワ!」

岡野昭仁「ベイベェェエエエエエエ〜〜〜ッ!!!!!!!」

新藤晴一「トゥトォワントォワン〜ワントォワンワントォワンワントォワンレ〜ワントォワン」

岡野昭仁「…ンナァッ…!ナナッツ…!ナナッツナァアォッ……!!」

新藤晴一「ギュイイイ〜〜〜〜〜ン!!」

岡野昭仁「オォン…」

新藤晴一「トゥトォワントォワン〜ワントォワン〜トォワン…トゥルゥルトゥルトゥルトゥル!」

岡野昭仁「ヒィイッヒィ〜〜ッ!!!!」

まさに常軌を逸した、驚天動地の叫び。特にラストの「ヒィイッヒィ〜〜ッ!!!!」を聴いた時の衝撃たるや、未知の世界に生まれ落ちた感覚でした。本当に意味が分からなかった。前述した「イェーイ」や「ウォーウ」ではない、掟破りの「ヒィイッヒィ〜〜ッ!!!!」がそこにはありました。

しかし、曲の主人公のどうしようもないほどの寂しさと切なさ、それでも日々を生きていかなくてはならない現実、そんな感情を表す言葉は「ヒィイッヒィ〜〜ッ!!!!」以外にはあり得ない。岡野昭仁の天を突くような高音から放たれるレーザービームのようなフェイクは、私の耳と心を掴んで離さなかったのです。

この瞬間から私の新しい人生が、フェイクに取り憑かれた人生が始まりました。それからというもの、叫びが素晴らしいと感じたボーカリストの叫びを分析、調査し、リリースした楽曲全ての叫びの部分だけを文字に起こしたブログを運営しているほどです。

もう曲などいらない、叫ぶだけのライブに行きたい。いやむしろ叶うのならば、私自身がボーカルの叫びそのものになりたい、そう考えています。

今回はそんな叫び、フェイクの魅力を余すことなく伝えたいと思います。そしてこの記事によって全てのアーティスト、ボーカリストがもっともっと叫ぶ世界を作りたい。そう考えています。

そもそもフェイクの起源とはどこにあるのか。諸説ありますが、9世紀から10世紀にかけて西欧から中欧のフランク人たちのあいだで発展した神の祈りや礼拝で歌われる宗教音楽「グレゴリオ聖歌」が発祥なのではないか、と言われています。

グレゴリオ聖歌で使用されるフェイクは「メリスマ」と言われており、1音節のなかで音符が複数歌われることを意味しています。そう、我々が生まれるずっと前から人々は叫んできたのです。

「フェイクなくして名ボーカリストなし」とは、私がたったいま興奮して作った名言ですが、人々の心を虜にするボーカリストたちは必ずと言っていいほどフェイクを得意としています。最後に、私が調査した最強のボーカリストたちのフェイクの魅力を紹介します。

Mr.Children桜井和寿

卓越した言語能力で日本中を共感の渦に巻き込む歌詞と、誰もが耳に残るメロディセンスはまさに日本を代表する鬼才。そんな桜井和寿を桜井和寿たらしめているのは唯一無二のボーカルです。

2015年に放送されたNHK「SONGSスペシャル」で桜井和寿は自身のボーカルについて「曲によって求められている感情っていうのがきっとあると思って、その感情にできるだけ近い声の柔らかさや硬さだったりとか、音の切り方とか、何度も主観と客観を繰り返しながら歌入れをしていく感じですね。だから、イントロがあって、最初の歌の声の出し方とかニュアンスはすっごいこだわる」

と語っています。曲によって自分の声をまるでカメレオンのように変化させているのですが、そこには燦然たる「桜井和寿」が輝いているのです。地声と裏声が入り交じる少しかすれた声は、どれだけ他のボーカリストが真似をしても小手先のテクニックでは到達し得えません。

その個性はフェイクでこそ輝くものがあり「桜井和寿が一回フェイクを歌うごとにどこかで争いが一つ消える」と言われるほど。まさに声のバタフライエフェクト。特に2014年にリリースされた『足音 〜Be Strong』で見せたフェイク「イェッヘッへ!」は、サウダージの「ヒィイッヒィ〜〜ッ!!!!」と双璧を成す二大フェイクとして語り継がれています。

B’z稲葉浩志

一度聴いたら二度と忘れることが出来ないクセと圧倒的なパワーが融合した声は、日本ロック界のキングの名を欲しいままにしています。

楽曲中に含まれるフェイクの数は、私が調査した中ではブッチギリの日本一で(B’zのリリースした楽曲全412曲中、フェイクが含まれているのは驚愕の312曲)、フェイクと言えば稲葉浩志、と言っても過言ではありません。

特に楽曲の随所で音符と音符の間に自由自在に挟まれる「アウイエ!」「ヘェイ!」などの「アマングフェイク」の多さは、もはや稲葉浩志の叫びなのか楽器なのか分からなくなりました。

三浦大知

「和製マイケル・ジャクソン」と評されることもあるほどの日本人離れしたダンスとボーカル能力は日本国内でもトップクラスの実力を持ち、「人間に歌えるのか…?」と思うような歌と「人間に踊れるのか…?」と思うような踊りを同時に行う正真正銘の怪物。

その実力はフェイクにおいてもいかんなく発揮されており、低音から高音まで曲を縦横無尽に駆け巡るフェイクで楽曲のスピード感を何倍にも加速させています。特に、2023年にリリースされた楽曲『能動』のラストでは

「全てを懸゛げェエてェエエエエエエエェェエエエ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!ェエエエエエエエエエエエエエエエエェ……エエエエヘェェエエエエエイエヘエエエェェェェエエエエェェェエエェェェェエエエエエエェェェェェィ………………アア゛ァァァァアアアアアアアオオオオッッッ!!!!!!!」

と、腰を抜かすほどの恐るべきロングトーンとフェイクを披露しています。

Official髭男dism藤原聡

女性ボーカリストにも出せない刃のような鋭いハイトーンボイスが武器の藤原聡。ヘビーメタルをルーツに持つ彼のフェイクは優しそうな外見からは想像できないほど激しく攻撃的で色気に満ち溢れています。そんな彼の魅力とは「ギャップ」。大人気アニメ『SPY FAMILY』の主題歌にもなった代表曲「ミックスナッツ」ではイントロが始まるやいなや

「ヌ゛ァァァアアアアアアアア!!!!!」

と、まるで檻から解き放たれた猛獣のような雄々しい叫びを聴かせてくれています。

藤井風

地元である岡山弁の訛りと、幼少期より父から教わったネイティブな英語の発音をミックスさせた独特の歌い回しは、高層ビルに囲まれたきらびやかな都会と大自然に囲まれた雄大な田舎の風景が共存しているような錯覚を起こさせます。フェイクにおいてもその自由さは存分に発揮されており、従来の日本人歌手では考えられないようなフェイクを聴かせてくれる。特にデビュー曲『何なんw』で見せた

「裏切りのブルースゥバラベレンベベレベレン ベベレンババランバ!!!!」

は、まさに「革命」。叫びボーカル界の新星がここに誕生しました。

…なぜボーカリストたちは叫ばずにはいられないのか…その理由は「言葉を超えた魂からの叫び」にあると私は考えています。そしてそれこそがフェイクの最大の魅力であり、人間を狂わせる魔力。

ボーカリストが歌詞の主人公そのものになり、曲が紡ぐ物語をまるで自分のことのように捉え、言葉にできない感情が爆発し、音として現れた姿がフェイクなのです。

そしてそのフェイクを耳にした瞬間に我々リスナーも曲と同化し、理屈ではなく「本能」で曲に共感することができるのです。

ぜひボーカリストたちの叫び、フェイクに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

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