この世にクソ映画なんてない。どんな映画も絶対に楽しめる映画鑑賞のテクニック
目次
みなさま、はじめまして!私は2000年から運営を続けている映画サイト/ブログ「破壊屋」の管理人、ギッチョです。
映画が多すぎる
日本はアメリカ・インドに次ぐ映画大国で、毎年1000本以上の映画が公開されます。去年(2023年)は1200本以上の新作映画が公開されました。毎日3本の新作映画を観ても追いつきません。
そのうち日本映画は毎年600本ほど製作されるのですが、ここ数年は日本映画の躍進が凄いですよ。2022年には『ドライブ・マイ・カー』が日本映画で初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされました。今年は『ゴジラ-1.0』がアジア映画で初めてアカデミー賞視覚効果賞を受賞して大きな話題になりました。
変な映画も多い
でも私がサイトの運営を初めた2000年以降、変な日本映画も多かったです。例えばですが…
- ビッグダディの元妻を映画化した『ハダカの美奈子』
- ボクサーの亀田大毅を主役にした『ヒットマン 明日への銃声』
- ゼロ年代の王子ブームに便乗した『銀幕版 スシ王子! ~ニューヨークへ行く~』
などといった謎企画の映画が大量生産されました。私はこのような映画を好んで観ていたのですが、友人知人に留まらずネット上からもよく
「何であんなに駄作を観続けられるのか?」
と何度も何度も言われました。でもその答えは簡単です。面白くて楽しいから観ていたのです。
駄作も楽しく鑑賞する方法
これは私の自慢なのですが、私はどんな駄作でも絶対に面白く鑑賞できます。といっても日曜洋画劇場の淀川長治氏(※)のように慈愛の精神で映画を観ていたわけではありません。日本映画には観ていて脳汁が発生するような面白ポイントがあって、私はそこを押さえているのです。
今回はそんな日本映画の脳汁発生ポイントを皆様にご紹介します。
※どんな駄作でも絶対に褒める映画評論家
日本映画の脳汁発生ポイント:外国映画の影響に気がつく
実は日本のテレビドラマや映画は外国の翻案が多くあります。テレビドラマだと『古畑任三郎』が『刑事コロンボ』、『あぶない刑事』が『特捜刑事マイアミ・バイス』を元にしているというのが有名な話です。もちろんパクリではありません。『古畑任三郎』や『あぶない刑事』が強烈なオリジナリティを持っているのは周知の通りです。海外で成功している作品を日本で再現したら?というのは非常に面白い挑戦なのです。
例えば『矢島美容室 THE MOVIE 〜夢をつかまネバダ〜』は下品なストリップを踊ることで逆説的に家族の絆を確認する…そう名作『リトル・ミス・サンシャイン』の翻案です。また『サブイボマスク』は地方都市で献身的に活動する兄と自閉症の弟…これはジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの名作『ギルバート・グレイプ』の翻案です。『矢島美容室 THE MOVIE 〜夢をつかまネバダ〜』も『サブイボマスク』も今となっては「そんな謎な企画映画あったなぁ」という扱いでしょうが、翻案に気がつくと「企画はアレだったけど、映画の本当の狙いはよく分かった!」と作品の面白さが理解できます。
日本映画に限らず世界中の映画は何らかの元ネタの影響を受けています。これに気がついて「あのシーンはあの映画の影響だね、ウン私には分かる」と偉そうにネット上に評論を書くのは映画ファンあるあるな脳汁発生ポイントです。低予算の日本映画はこういった評論に晒されていないので、意外と「自分だけが気づく」ことが多いのです。
ちなみに私が今までで一番驚いた翻案ネタは、ケータイ小説の実写化『魔法のiらんど 幼なじみ』です。16歳のヒロインが幼馴染の想い人に恋し続ける物語で、その幼馴染は高校サッカーで成功していくのですが、このサッカーシーンが『少林サッカー』の影響を受けていてビックリしました。映画の雰囲気はブチ壊しでしたが、超面白いシーンでしたね。
日本映画の脳汁発生ポイント:専門キャスティング
一人の俳優が何度も何度も同じ役を演じ続けるのは、どの国でも同じです。アーノルド・シュワルツェネッガーは「戦う公務員」役が多いし、レオナルド・ディカプリオは「妻を失う男」役が多いです。ただ日本は映画の製作本数がやたら多い上に、所属事務所が俳優のイメージにあった役柄を用意するので、同じ俳優が同じ役柄を演じ続ける現象が海外よりもずっと多いです。例えば…
- 織田裕二、福山雅治、中井貴一といった大物スターの単独主演映画では、妻役には吉田羊がキャスティングされる
- 冴えない男性主人公に一方的に惚れられるシングルマザー役だったら麻生久美子がキャスティングされる
- 殺人ミステリーでは真犯人の知人役には広瀬すずがキャスティングされる
という、まるで悪役俳優みたいな専門職俳優がいます。このように俳優の役割が分かると、
「あ、また同じ役だ!」と気づく喜びもあれば
「お、違う役に挑戦している!」と気づく喜びもあります。
映画を観る楽しさも増えてきます。
ちなみに日本映画は製作本数が多すぎるため、俳優と俳優が何らかの映画で共演済みな場合が多く、お互い知り合い同士なので外国映画みたいに俳優同士のケンカで撮影現場が停滞することが少ないらしいです。
日本映画の脳汁発生ポイント:特別出演
日本映画は「大物俳優が、話題作りのために一日だけ撮影現場に来て出演してくれる」ことが非常に多いです。テレビ局が作る映画は超大物俳優の特別出演だらけでかなり楽しいです。例えば前述の『矢島美容室 THE MOVIE』では水谷豊、本木雅弘、宮沢りえ、松田聖子などが特別出演しています。しかしその一方で低予算映画の「特別出演の使いどころ」も脳汁ポイントです。
和歌山県を舞台にした『ポエトリーエンジェル』という低予算映画があるのですが、軽薄な男役で何と山﨑賢人が出演しています。あらゆるマンガ主人公を演じてきた山﨑賢人が珍しく軽いコメディ演技を披露する名シーンです。
また人間の善意を描いた映画『町田くんの世界』では、人間の悪意を象徴する存在として佐藤浩市が特別出演!悪意に溢れた日本社会をセリフで説明するのですが、名優:佐藤浩市なので迫力と説得力がタップリ。見事な特別出演の使い方です。
恋愛映画の『娚の一生』では愛の告白が成就しクライマックスも終わった映画の終盤に、突如恋のライバルとして向井理が特別出演します。恋敵としては間違いなく日本最強の存在です!というか勝てる男はいるのでしょうか?『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』で全ての戦いが終わった後に上弦の鬼が登場した時以上の絶望感が味わえます。
このような特別出演ネタですが最近はハリウッドでも流行っています。アメコミ映画が話題作りのために「有名俳優をこっそり出演させて、そのことを宣伝しない」という手法を使っています。そうするとSNS上で「映画館で驚いた!」という感想が増えるので、人々が映画館に向かうわけです。
日本映画の脳汁発生ポイント:ロケ撮影
日本映画の根本的な問題として低予算があります。低予算のせいで日本映画は派手なセット撮影ができずロケ撮影だらけです。私は神奈川県民ですが、10本くらい映画を観れば1本は知っている場所が舞台になっています。特にみなとみらいの万国橋と大さん橋の二箇所は頻出ロケ地です。知ってる場所が舞台になる現象は東京都民だったらもっとよく分かると思います。
そして日本映画はあまりにもロケ撮影し過ぎているせいか…ロケ撮影が非常に上手い!
例えば2014年の『さよなら歌舞伎町』という映画では、AKB48を卒業して絶大な人気と知名度を誇っていた前田敦子が、新大久保駅を自転車二人乗りで駆け抜けるというゲリラロケを敢行しています。
池田エライザの弓道部映画『一礼して、キス』では池田エライザが弓を放つ瞬間に偶然にカメラの前にカモメが飛び込んできます。セット撮影ではありえない奇跡でしょう。
またつい最近では、ロケ地モノの頂点とも言える『帰ってきた あぶない刑事』が公開されました。もうお爺ちゃんとなった舘ひろしと柴田恭兵が若々しく横浜ロケで活躍する姿は観ているだけで幸せな気分になります。
また地方自治体は「聖地巡礼」の観光客を呼び込むためにロケ撮影に協力的です。そのため地方が舞台の映画は大胆なロケ撮影が行われており、これも日本映画の面白ポイントです。
他の発生ポイント
これらの脳汁発生ポイントはほんの一部で、他に
- 登場人物たちが食べる食事
- 女優が走り出すときの情景
- エンドクレジットで流れるロケ写真
- ロケの場所には意味がある、例えば橋と階段とトンネルではそれぞれ意味が違う
など、まだまだ紹介しきれない面白ポイントがあります。いずれまた皆さんにご紹介したいです。
最後に
今は配信の時代なので、映画は「ながら見」「早送り再生」とかで鑑賞するスタイルが流行りつつあります。私はこのような鑑賞スタイルにも肯定的で、映画を気軽に楽しんで頂けるなら何でも良いと思っています。その一方で私のように、鑑賞ポイントを押さえながらジックリと映画を観るスタイルもオススメですよ。
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