煩悩からハマったヤクルトファンという修羅の道から抜けられない。
目次
はじめに 如何にして僕はヤクルトスワローズファンになったのか。
僕はフミコフミオ、本職はブロガー、副業で食品会社の営業部長をやっている50歳のおっさんだ。このたびは、この場をお借りして、人生のほぼすべての期間をかけてハマっている東京ヤクルトスワローズとプロ野球について語りたい。
僕はヤクルトスワローズ沼にズブズブにはまっている。数年に一度の頻度で、ふと我にかえり「ヤクルトに費やしている時間を仕事に向ければ、もっとビッグな存在になっていたかもしれない」と思い、ヤクルト断ちをすることがある。
だが、数分のうちに「落ち着かない」「不安を覚える」といった禁断症状が起き、また自ら沼へ頭から飛び込んでしまう。ツバメになって自由に大空を飛び回りたいが、沼にはまりすぎて半魚人に接近しつつあるのが実態だ。
東京ヤクルトスワローズとの不幸で幸せな出会い
ヤクルトスワローズとの出会いは、小学校低学年にまで遡る。1980年代前半。当時、プロ野球は国民的スポーツで、毎晩のようにナイター中継がテレビ放送されていた。中継はほぼ巨人戦だった。そのため読売巨人のファンになる友達が圧倒的に多かった。
当初、僕も巨人ファンだった。だが、巨人戦のナイターを観ているうちに、対戦相手のヤクルトスワローズに興味がわいてきた。弱く、大概負けているが悲壮感がなくて明るかったのだ。
80年代のヤクルトはとことん弱かった。成績は散々。80年代の順位は1980年の2位以降6、6、5、6、6、4、5、4位(暗記している)。10年間でBクラス9回うち最下位4回。調べたら勝率5割を越えたのは1980年のみで勝率3割台を3回記録。暗黒時代真っ只中だった。それでもヤクルトは明るかった。観客席のおじさんたちは東京音頭で楽しそうだった。
当時、ヤクルトスワローズを追うには、ラジオのナイター中継か新聞のスポーツ欄しか手段がなかった。一般紙のスポーツ欄のヤクルト戦の記事は、悲しいほど小さかった。写真もなかった。記載されている選手の出場成績とスコアから、どういう試合だったのか想像するしかない。今でもデータをみればどんな試合経過かだいたい想像できるのは、このころの経験が活かされている。
ファンになった決定打は、神宮球場での野球観戦。無料チケットで、神宮球場の内野席の僕の隣の席に、赤いミニスカートをお召しになったセクシーなお姉さんが座ったときだ。お姉さんはヤクルトの攻撃のたびに足を組み替えた。それを見ているうちに、僕は、完全にヤクルトスワローズのファンになった。以来、僕の血管には煩悩とヤクルトミルミルが流れている。
余談だが同時期、僕はロッテオリオンズ子供会にも入っていた。ヤクルトとロッテという負けてばかりの二チームを応援するうちに、勝ち負けに対する感情やこだわりは完全に焼失した。ロッテは高校三年のときの千葉移転を機に別のチームになった気がしてファンをやめた(今でもパ・リーグではいちばん好きな球団だが)。ロッテがいなくなってからはヤクルトへの偏愛を持ち続けてきた。そして、球団名が東京ヤクルトスワローズに変わった現在にいたる。
偏愛ポイント1:「BBAの法則」で病みつき!
東京ヤクルトスワローズ(以下ヤクルト)は、80年代の暗黒期、90年代の黄金期を経た現在でも成績が安定しないチームだ。Bクラス(4〜6位)が続いたかと思うと突然Aクラス(1〜3位)に快進撃をする戦いぶりは一部ファンから「BBAの法則」「躁鬱球団」と呼ばれている。「BBAの法則」とは2シーズン停滞(BB)後突然躍進(A)するヤクルトの傾向をあらわしたものだ。
最近も2年連続最下位に沈んだ翌シーズンに突然リーグ優勝を飾り、勢いそのままに日本シリーズまで勝ち取ってしまった(2021年)。ジェットコースターのようにファンの心を揺さぶるツンデレぶりに病みつきになってしまうのだ。ダメンズが突然覚醒してヒーローになるのだ。たまらない。
ヤクルトに強豪球団というイメージを持っている人は少ないだろう。安心してください。その認識は正しい。ヤクルトファン自身が強豪球団とは思っていないのだから。はっきりいって弱いときはひたすら弱い。
ただ「BBAの法則」で勝ち始めて調子に乗ると強い。球団黄金期と評価されている野村監督時代も常勝ではなく、1位と4位を繰り返していた印象。直近10年間の成績もファンの心を激しく揺さぶっている。直近10年間は、2014年の6位からはじまって、1、5、6、2、6、6、1、1、5である。勝つか(1位)負けるか(下位低迷)の二極、1位かビリかである。
普段は弱くてだらしないけれど勝ち始めるとたのもしい。それがヤクルトである。まるでテレビシリーズでは情けないけれど、劇場版だと頼もしくなる「のび太」のようだ。
なお、この原稿を執筆している時点で最下位。昨シーズンは5位に低迷。だが、ここ10年間でビリに4回なっているが1位3回日本一1回を達成しているので満足度はすこぶる高い。日本シリーズは通算でも強い。なんと出場9回で優勝6回だ。強豪球団みたいだ。
普段はダメだけれども突然大勝する中毒性の高いコンテンツ、それがヤクルト。弱いとき、ファンはあたたかく、弱いチームを見守る。「明日は勝てるさ」「ドンマイ」と。前触れもなく快進撃を見せて強敵を打ち倒していくときは、弱い時期を共に耐えている分喜びもひとしおだ。「よし頑張ろう」という気力をもらえる。常にAクラスにいて優勝に絡んでいるチームでは味わえない。こんな極端なチームは日本のプロ野球には他に存在しない。沼である。
偏愛ポイント2:家族のように仲がいい。
ヤクルトはファミリー球団といわれている。家族経営ではなく、家族のように仲がよいチームという意味だ。選手同士が仲良くて「わちゃわちゃ」していて、見ているだけで微笑ましい。そのチームカラーは近年ますます強くなっている。
ヤクルトは主力を他のチームに引き抜かれてきた歴史がある。90年代から約20年間、苦労して獲得して、日本野球に慣れるまで使ってきた外国人選手を、引き抜かれる。悲しかった。
ハウエル、ペダジーニ、ラミレス、グライシンガー、ヒロサワ、カズシゲ、バレンティン。とりわけエースで最多勝を取ったグライシンガーと不動の四番ラミレスを引き抜かれた2007年は……いや、誹謗中傷になるからやめておこう。悲しかった。好きだった女の子が、嫌いなクラスメイトの彼女になっていたときのような悲しみだった。
このような歴史があるため、今のファミリー球団ぶりは楽しい。近年の外国人選手、リーグ制覇に貢献したバーネットやマクガフは、メジャーリーグに移籍してもヤクルト愛を見せてくれている(バーネットは球団スタッフになった)。
嬉しい知らせが入った。なんと、現在主力のオスナ・サンタナのコンビが、選手サイドからのヤクルト残留を希望して、来シーズンから新たに3年契約を結んだのだ。40年以上、他球団も含めてプロ野球を見てきたけれど、こんな外国人選手は知らない。
仕事をしているとストレスを感じるけれども、ヤクルトの仲良しぶりはストレス軽減効果があるらしく、心身ともに良いのでやめられない。仲が良すぎるあまり皆さんが仲良く不調に陥って大型連敗を喫することもある。
だが、火ヤク庫と呼ばれるように打線が大爆発するときもあって、それはファミリー球団の団結力が生み出している。また、石川、青木といった40代おじさんレジェンドたちが、いい味を出してチームに影響力をもっているのも、同じおじさんとして嬉しい。
偏愛ポイント3:大谷さんをチェックしている暇がなくなる。
世間は国民的スター大谷翔平さんの活躍に夢中だ。だが僕は彼がホームランを打っても特に何も思わない。大谷翔平さんがヤクルトの選手ではないからだ。
ヤクルト以外のチームに興味がない。ヤクルトが勝つと最高だが、負けても楽しい。ヤクルトを通してプロ野球を、勝ち負けを越えた部分で楽しんでいる。
長年ファンクラブに加入しているが、応燕グッズはもっていない。東京音頭で有名な傘も、自宅に一本飾ってあるだけで持参はしない。僕は応燕より観戦を重視しているのだ。ちなみに応燕と書いているがヤクルトファンは応援のことをこう呼ぶ。念のため。
神宮球場その他の球場で観戦するときは試合に全集中。応援歌も歌わない(山田哲人の応援歌は例外)。試合前のキャッチボールやブルペンの様子。試合中頻繁に変わる守備シフト。中継ではわかりにくいポイントを見ていると応燕をしている暇がないのだ。写真を撮る時間もない。
日常のタスクは多い。シーズンオフも忙しい。ファン感謝祭、新人ドラフト、秋季春季キャンプ、現役ドラフト、新入団外国人選手、戦力外通告のイベントやデータサイトなど、追わなければならない項目が多く、忙しい。僕のように、仕事中、「支配下選手枠があと三つだから…」とぶつぶつ言うようになってようやく本格的なファンだといえる。
シーズン中はさらに忙しい。平日の試合は年休を取るか、早退をしなければ現地観戦はできない。管理職に就いてからは幹部ミーティングが増え、早退できなくなった。休日には家族サービスがある。そのため、球場での試合観戦は、年間十数試合。自然とネットやテレビの試合中継が中心となる。
各スポーツメディアのヤクルト関連ニュースをチェックすることから朝がはじまる。昨日の試合の詳報や裏話等。余裕があれば選手のSNSもチェックする。
日中も3時間毎に信濃町の方向を向き、つば九郎神社に向けて必勝祈願。2軍のデイゲームが13時からはじまるのでネットで出場選手と成績をチェック。空いた時間があればヤクルト関係のニュースをチェック。こうした本業の合間に、副業の営業部長の仕事をこなす。多忙だ。
出場選手登録が16時に発表されるのでチェックして、18時の試合開始に備える。ヤクルトの試合中継を見るために有料チャンネルに加入し、スマホでいつどこでも観戦できるようにしてある。18時に仕事を終えると、一回表裏の攻防が終わるまで部長席に座って仕事をしているふりをしながらスマホで観戦。
帰宅後は、表向きは奥様対応を第一に、心と精神は野球中継に集中して試合終了まで観戦。深夜までスポーツニュースや野球系サイトをチェックしたいが、そこまで没頭すると奥様から叱られるので、就寝するようにしている(朝に戻る)。
休日も仕事が家事と家族サービスに変わるだけで、基本的には同じ。これが火曜日から日曜日、試合日のすごし方になる。試合がない日は、プロ野球のデータを扱っているサイトをチェックする日に当てている。このように、ヤクルト漬けの忙しい生活を送っているため、大谷翔平さんを追うことはできない。完璧な大谷翔平さんの唯一の欠点、それは彼がヤクルトの選手ではないこと。ヤクルトでなければ僕の心を動かすことはできないのだ。
まとめ/2024年夏のヤクルトファン
現在(2024年8月20日)、ヤクルトはセ・リーグ最下位である。セ・リーグは近年にない接戦が続いているのでまだ優勝の可能性は残っている。ヤクルトは、既存戦力と新戦力で粘り強く戦っている。西川や松本といった、他球団を戦力外になった選手や、長く二軍で苦労していた選手が活躍していて今シーズンも面白い。
ヤクルトは、つば九郎人気もあって、昔と比較すると人気のある球団になった。ヤクルトの神宮球場主催試合のチケット購入も難しくなっている。かつてタダ券で観戦していたのが嘘のようだ。素直に嬉しい。
リーグ連覇、トリプルスリーの山田哲人キャプテンや、三冠王の村上などのWBC出場からファンになった人たちは、ヤクルトスワローズという浮き沈みの激しく、仲の良いプロ野球チームを長い目であたたかく見守ってほしい。そこに人生を重ねると病みつきになること間違いなしである。
僕の夢は、ヤクルト対ロッテの日本シリーズをこの目で観ることだ。それが叶ったらこの世に未練はございません。
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