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11年の歳月も関係ない!『艦これ』の魅力

熊代亨
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。
ヲトナ基地で今回紹介する記事は「11年の歳月も関係ない!『艦これ』の魅力」。熊代亨さんが書かれたこの記事では、艦これへの偏愛を語っていただきました!

精神科医をしながら本やブログを書き続けている、熊代亨と申します。今回日は「ゲームへの偏愛」というお題をいただき、編集部さんに相談したら「『艦隊これくしょん(以下、『艦これ』と表記)』について書いて構わないよ」とうかがったので、遠慮なく『艦これ』への偏愛とその魅力について書きます!

私は、私自身のアイデンティティの中心軸は精神科医ではなくゲーム愛好家にあると感じてきました。中年になった今、さすがに仕事に押されている部分もありますが、それでもゲーム愛好家として現役でありたいと願い、ニンテンドーSwitchのゲーム、ソーシャルゲーム、海外産のPCゲームなどで遊び続けてきました。

そうしたなか、今までの人生で一番遊び続けているゲームが、2013年にブラウザゲームとしてリリースされた『艦隊これくしょん』なのです。

『艦これ』がリリースされたのは2013年4月23日。その年の初夏にtwitter(現X)で話題となり、一気にブレイクしました。当時はゲームを始めたい人の数にサーバー増設が間に合わず、私はアカウント開設の抽選に漏れ続けたせいで、他のプレイヤーの楽しそうな様子を眺めているしかありませんでした。

結局私が『艦これ』をプレイできるようになったのは2014年2月頃で、それから10年以上、お付き合いしていることになります。

「まだ『艦これ』なんてプレイしてるの?」とおっしゃる人もいるでしょう。ゲームの世界は栄枯盛衰が激しく、アニメ化されるほどの人気作品でも容赦なくサービス終了になってしまいます。『艦これ』も、話題沸騰していた最初期やコラボレーションが相次いだ2010年代後半に比べれば、人気が落ち着いていると言えます。

ですが私と同じく『艦これ』を愛し続ける人はまだまだいますし、最近になってプレイし始める人、数年ぶりに舞い戻ってくる人も珍しくありません。

リリースしてから11年も経つ『艦これ』に、どんな魅力があるのでしょうか?

艦娘の魅力はリリースから11年経っても健在

2024年現在、事情を知らない人が初めて見る『艦これ』の印象は、「メカみたいな装備を身に着けた、ちょっと地味な女の子がたくさん出てくるソシャゲっぽいゲーム」ではないでしょうか。

いまどきのゲームにはキラキラした美少年や美少女がどっさり登場し、キラキラした魅力を振りまいているものですが、『艦これ』に登場する艦娘(女の子に擬人化した艦船キャラクター)は美少女ばかりではありません。なんだかあか抜けない艦娘、どう魅力的なのかが一目見てすぐにわかるわけではない艦娘もたくさん登場します。

なかでも当初から注目されたのは、上掲引用ツイートにも登場している「しばふ絵」でしょうか。キラキラした美少女のイラストが無尽蔵にある時代だからこそ、空母「赤城」や戦艦「日向」といった一線級の艦娘までもがほっこりした雰囲気なのはかえってインパクトがありました。

『艦これ』は、プレイヤーが艦娘たちの艦隊を指揮し、深海棲艦という未知の敵と戦っていくゲームですが、何百人もいる艦娘の全員がキラキラの美少女だったら顔が覚えにくく、眩しくて見ていられなかったでしょう。     

「しばふ絵」のような温かみのあるイラストを採用できたのは、艦娘が数十年前の艦船をモチーフにしているためか、それとも低予算路線でスタートしたからかは私にはわかりません。が、結果としてキラキラした美少年や美少女がどっさり登場する作品には真似のできない独特な雰囲気が『艦これ』に宿ることになりました。

ただし、『艦これ』に美少女が存在しないわけではないですよ? たとえば航空巡洋艦「ゴトランド」はファンの間でも人気で、NHKの特集番組でも「あざといキャラクター」と言われていました。高速戦艦「榛名」のような正統派美少女もいます。でも私のように中年になってくると、「きれいどころ」ばかりの艦隊よりも、そうでないほうが目にやさしく、長く眺めていても飽きが来ません。

キラキラしていないからといってビジュアルが手抜きなわけでもありません。艦娘をよく観察すると、装備やセリフのあちこちに史実を反映しているところがあり、元ネタを知っていると感慨深いものがあります。『艦これ』は、第二次世界大戦で艦船たちが辿った運命を知っていると印象に残るグラフィックや台詞を用意するのが上手くて、それが、後で紹介するイベント海域ともうまく噛み合っています。

ゲームそのものもよくできていて、上手く運営されている

こうした「艦娘ならではの魅力」「史実を反映した魅力」がクローズアップされがちですが、私は『艦これ』の魅力ってそれだけじゃないよね、と考えています。あまり話題にのぼるところではありませんが、『艦これ』はゲームそのものも元々よくできていて、しかも何年もプレイし続けられるゲームとして巧みに運営されているように思われるのです。

艦娘を少しずつ集め、深海棲艦という謎の敵集団から海域を解放していく通常マップは、攻略していて楽しいものでした。海戦はスムーズで敵艦に攻撃を命中させた時の効果音も気持ち良く、ときどき出る「カットイン攻撃」の描画も印象的でした。この通常マップを軸にした「戦果ポイント稼ぎ競走」に目覚めて、毎日毎日プレイしている人もいるとかいないとか。

当初、ここまでヒットすると想定されていなかったゲームとしては、『艦これ』のゲームシステムの骨組みやインターフェースはしっかりしていたと思います。もっとゲームバランスが悪かったり、もっとインターフェースがモタモタしていたりしたら、『艦これ』はとっくの昔にサービス終了していたに違いありません。

それ以上に注目したいのが、『艦これ』のゲーム運営です。オンラインゲームの運営はプレイヤーから批判されやすく、『艦これ』とて例外ではありませんでした。しかし11年間全体をとおして見れば、『艦これ』はとても上手く運営されていて、私たちファンの心を惹きつけ続けているのではないでしょうか。

その筆頭格は、数か月に一度開催されるゲーム内イベント「限定海域」です。これが毎回難しいのですが、『艦これ』の運営陣はこの「限定海域」がマンネリにならないよう毎回マップを変え、ゲームルールも微調整し、手に入れられる装備を変え続けています。     

「限定海域」は現在の手持ちの艦娘の装備や熟練度、燃料・弾薬などの備蓄量、そしてプレイヤー自身の時間的・体力的余裕をよく考え、さらにインターネット上の攻略情報などを見比べ、プレイヤーそれぞれが目標を立案・計画し、育てた艦娘たちと一緒に挑む「作戦」になります。     

今どきは、プレイヤーがキャラクターを育てて試練に挑むゲームがいくらでもありますが、『艦これ』の「限定海域」ほど「作戦」という言葉がよく似合い、ゲーム内イベントを無事に完了できるかドキドキするゲームは他にありません。ゲーム内イベントで「作戦」という手ごたえを感じたい人には、『艦これ』は今でも有力候補のひとつでしょう。

ゲームの外にもあふれる、艦これの魅力

最後に、『艦これ』を語るうえで忘れられない、リアルイベントについても触れます。『艦これ』も御多分に漏れず、さまざまな企業とコラボレーションしています。三越やローソンとのコラボは特にファンに知られていて、私はローソンで売られていた『艦これ』チューハイがすごく気に入ってしまって売られるたびに買いだめしていました。また、東京の神田には期間限定の艦これ飲食店「カレー機関」が存在し、ここもファンが集まる場所となっています。

でも、『艦これ』のリアルイベントといえば、なんといっても旧日本海軍や海上自衛隊にゆかりのある都市とのコラボでしょう。21世紀に入ってからはアニメやゲームの舞台となる街を訪ねることを”聖地巡礼”と呼びますが、『艦これ』のそれはやりがいがあります。

艦娘たちは第二次世界大戦当時の艦船が元ネタですから、軍港や海戦のあった場所は基本的に”聖地”と言って良いでしょう。旧海軍時代に鎮守府と呼ばれた都市だけ挙げても、呉市、横須賀市、佐世保市、舞鶴市と広い範囲に散らばっていて、全ての街を訪れるのは大変です。     

そのかわり、戦没した艦艇の主砲が残っていたり、慰霊碑が立っていたり、『艦これ』ファンなら足を留めずにいられないロケーションが無数にあります。呉市の大和ミュージアムとその周辺施設も必見でしょう。これらの街では海上自衛隊の護衛艦も眺められますし、ときにはその海上自衛隊が『艦これ』の艦娘と同じ名前を継承した護衛艦を、艦娘のイラスト付きで公開していることもあります。

そうしたリアルイベントの運営に関しても『艦これ』はとても上手で、現在もイベントが開催され続けていますし、地方自治体や海上自衛隊とのコラボもうまくできているように見えます。『艦これ』の魅力を考える際、こうした史実の存在はとても重要なポイントで、艦娘をとおして知った艦艇の慰霊碑や記念碑の前に立つ時にこみあげてくる気持ちは、ほとんどのゲームにはない独特のものです。

まとめ

『艦これ』の魅力を言葉にすると、こんな感じになるでしょうか。

私たちファンが『艦これ』をこんなに長くプレイし続けるに至った背景はさまざまだと思います。艦娘のデザインや設定や台詞、ゲームの基本的なつくりや運営の巧みさ、史実やリアルイベントや”聖地巡礼”、そして『艦これ』の二次創作作品やオンライン上のファン活動などのおかげで、替えのきかない、息の長いゲームが成り立っていると私は考えています。

ゲーム愛好家人生のなかで、これだけ長く楽しませてもらえるゲームに出会えた幸運をうれしく思います。これからもどうか、この忘れられないゲームを素晴らしく運営していただけたらと切に希望しています。

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