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モテたくて美大に行った! でもモテなかった話だよ

地主恵亮
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「モテたくて美大に行った! でもモテなかった話だよ 」。地主恵亮さんが書かれたこの記事では、「モテ」への偏愛を語っていただきました!

なぜモテたいんですか? と聞かれたことがある。私は驚いた。モテたくないという選択肢があることに。だってモテるとモテないなら絶対にモテる方がいい、というのが私の考えだ。もはや理屈ではなく、モテたいのだ。その欲求にロジカルな説明はつけられない。私はモテたいのだ。

モテるにはいろいろな方法がある。メラビアンの法則だとか、つり橋効果だとか、いろいろな法則や方法が存在する。ただ四六時中つり橋で誰かが来るのを待つわけにはいかないので、日常生活でどうすればモテるのを考える。

私は今までの人生の多くをモテることに費やして来たのだ。

歩道に立っている男性

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どうもこの記事を書いている地主です!

中学時代の帰り道、私はクラスメイトが男女で歩いているのを見た。帰る方向が一緒なのだろうと思ったけれど、やがて二人は手を繋いだ。私はごく控えめに言って驚いた。家族以外でも手を繋いでいいの、と。私は母としか手を繋いだことがなかった。厳密にはもっと幼い頃に弟とも繋いでいたとは思うけれど。

そこで初めて理解した。このクラスメイトは付き合っているのだと。私だって男女が交際することは知っていた。やがて結婚することも。ただそれは大人になっての話だと考えていた。中学生、まだ大人ではない。でも、私の目の前にいるクラスメイトは付き合っている。手を繋いでいる。

私は焦った。当時の私はモテなかったのだ。この事実は驚くことに40歳を目前とした今も変わっていない。モテないのだ。全くモテない。もし「モテないグランプリ」というものが存在すれば私は堂々の一位になるだろう。同時に「モテるグランプリ」があれば、堂々の最下位になる。何事も一位になることは素晴らしいことではあるが、そうではないのだ。私は「モテるグランプリ」の方で一位になりたいのだ。

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モテなくて日々頭を抱えています!

私には友達もいなかった。中学校、高校と友達がいなかったのだ。私の考え方として「10000人の友達より一人の恋人」という考えが先の瞬間から生まれたので、そのことについては全く気にしていない。友達より恋人なのだ。モテたいのだ。

それは今も変わっていない。「10000人の友達より一人の恋人」なのだ。結果、今も友達はいない。でも、それは気にしない。「10000人の友達より一人の恋人」だから。モテさえすればいいのだ。モテたくて、モテたくて今日もわたげをとばすのだ。誰かの赤い実をはじけさせたいのだ。

やがてモテることへの固執が私に脳汁を出させるようになった。こうすればモテるのではないかと仮説を立て、実行する。とても脳汁が出る瞬間だ。偏愛と言ってもいいかもしれない。

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モテたい!!!

モテるために美大に行く

時間の経過に期待する。中学時代はモテなかったけれど、高校に入ればモテるのではないか、と思うのだ。それは淡い期待であり、そのような期待はシャボン玉のようにすぐにはじけて消える。高校に上がったとて、モテなかった。中学時代より周りには恋人がいるクラスメイトが増えた。どうやら順番制ではないらしい。モテるという順番は全く回ってこない。

運動部や勉強できるやつがモテた。残念ながら私はどの部活にも入っていなかったし、勉強もできなかった。これは100点満点のテストですか? と親が疑問に思うような結果の時もあった。

私は現実から逃げなかった。モテるためにはどうすればいいのか、という今も向き合っている問題を解決するために動き出したのだ。モテるための本質的な答えはおそらく簡単で「付き合いたいと思える魅力があればいい」ということになる。つまり私に何かしらの魅力があればいいのだ。運動部や勉強ができるやつがモテたのもそういうことで、運動ができる、勉強できることが魅力になったのだ。

「優しいだけじゃダメですか」と思うけれど、それは大前提でそこにプラスの魅力が必要となるのだ。それに私は高校時代の早いうちに気がついた。そこは褒めて欲しい。優しいだけじゃダメなのです。プラスの魅力が必要なのです。

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美大に行くことにしました!

私は美大に行くことにした。モテるにはアートだという答えに行き着いたのだ。高校一年生の時点で気がついた。モテるにはアートだと。愛とはアートなのだと。有名な画家を思い出してみる。妻がいて、さらに愛人がいて、それらをモデルに絵を描いている。マティスもそうだし、ピカソもそうだ。

私は愛人が欲しいわけでは当然ないのだけれど、アートはモテるということだ。アートが魅力になるのだ。私はここに大いなるヒントを得て美大に行こうと決めた。特別にアートに詳しいわけではない。ありきたりだけれど、ゴッホの絵が好きだった程度だ。ゴッホの絵は私の見ているものとは違う世界があって子供の時に見て感動した。モテるためと、ゴッホだけで美大を志したのだ。

当時の美大は半分だけが現役合格という感じだった。現役合格は非常に難しかった。さらに私は地方に住んでおり、今はわからないけれど、当時は美大に行くには地方は不利だった。美大進学のための予備校がないからだ。それでも母が個人でやっている美大進学のための予備校を見つけて来てくれて、私は美大に向けて、いやモテるための最初の一歩を踏み出すことになる。

365日予備校に通った。平日は17時から21時、土日祝日は9時から21時。夏休みなどの長期の休みも9時から21時だ。毎日鉛筆デッサンや木炭デッサン、平面構成に勤しむ。夏休みも高校では補習や実力テストなどがあったけれど、全てを無視して、予備校に通った。

ある時に気がついた。あれ、俺、高校のクラスメイトと接点がほぼないぞ、これモテなくね? と。モテて愛が芽生えるイベントである文化祭も運動会も行かずに予備校で絵を描いていた。気がついた時にはもう遅かった。私は高校時代にモテることをあきらめ、美大での鮮やかでいて淡い色のキラキラしたキャンパスライフに賭けることにした。

どうせ高校で付き合ってもすぐ別れるからいいや、と自分に言い聞かせた。

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今はもちろん卒業しております!

その予備校には女の子がいた。ある時、その女の子と二人きりになった。雑居ビルにある予備校の教室のカーテンの隙間から夕陽が差していた。光が変わるとデッサンは困るのでカーテンを閉める。二人でモリエールの石膏像の木炭デッサンをしていた。彼女は私よりずっとデッサンが上手かった。

デッサン中に誰かと話すことはあまりない。一人で黙々と描く。それでもその時、私と彼女は少しだけ話をした。違う高校に通っていたので、お互いの高校のことや近況について。そんな話の中で、彼女が「私の髪型どう思う?」と訊いた。彼女の髪は長く美しかった。私は正直に「長い髪がとても似合っているよ」と答えた。彼女は「ありがとう」と言った。

次の日、彼女は短く髪を切って予備校にやって来た。

高校時代にモテることを完全にあきらめたエピソードだ。私は美大での桜色のキラキラしたキャンパスライフを信じることにした。アートはモテるのだ。そのことだけを信じることにした。その過程ではモテないのだ、きっと。美大に行くためのアートは、まだアートではないのだ。だからモテないのだ。長い髪をバッサリと切ってくるのだ。

歩道を歩いている女性

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結局私は美大に現役で合格した。モテるための扉を自らこじ開けた。映像学科に行くことにした。写真や映像が好きと気がついたので、そちらに行くことに決めたのだ。誰もが私の合格を予想していなかったので、家族すら驚いていた。それはなぜか。私は365日3年間デッサンをしたのだ、でもね、なのだ。

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これ、私の絵です!

全然上手くならなかったのだ。ずっと下手。自分でも驚く。365日3年間、盆暮正月も関係なく予備校に通った結果がこれなのだ。ふざけているとかではなく、120%の力でこれです。

なぜ美大に合格したのかというと、推薦という制度を狙っていた美大が急に始めて、推薦の知名度が低いのか、あまり受験生がいなくて、受けに行ったら合格したのだ。私を知る誰もが「ラッキーだったね」と言った。自分でもそう思う。ただそのラッキーはモテる方向で使いたかった。そのラッキーはないのだ。全てのラッキーを美大合格に使ってしまったのかもしれない。

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これが365日×3年間の結果です!

キラキラしないキャンパスライフ

美大に入ってからの私の話はとても簡潔だ。結論から言うとモテなかった。私のモテるための仮説「アートはモテる」に大きな落とし穴があったのだ。美大にはアートしかいないのだ。全員がアートだから、その中でモテるためには新たな魅力が必要となってくる。

高校は普通科だったからアートが魅力になったかもしれないけれど、美大ではアートが魅力にならないのだ。なぜアートが魅力になり得た高校でクラスメイトと接点を持たなかったのだろう、と後悔した。だってあの絵だぜ、文化祭とか行くべきだった。

もちろん美大にもカップルはいた。カップルが闊歩していた。手も繋いでいた。家の行き来もしていた。そういう話をよく伝え聞いた。私は一人だった。モテなかった。結果、とてもよく授業に出ていた。友達も恋人もいないのでやることは授業に出ることだけだった。優も多かった。学んだ感はある4年間だった。ある意味では充実した4年間だった。

その充実は求めてないのだ。キラキラの大学生活を求めているのだ。しかし全然キラキラしない。錆びている。光を反射しない。恋人も友達もいないのだ。キラキラする要素がないのだ。暇で本とかめっちゃ読んだ。バイトもめっちゃした。これだけ書くと充実しているように見えるけれど、違う。私の充実とはモテることのみなのだ。モテることでのみキラキラするのだ。

テーブル

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優が多かったよ!

他大学との交流で女性に出会えたのではないか、と思うかもしれない。友達がいないから他大学との交流がないのだ。輪が全然広がらない。バイト先ではと思うけれど、バイト先に女性はいなかった。モテないでずっと一人でめちゃくちゃ真面目に授業に出る美大生、それが私だった。模範的な大学生と言える。

違うのだ、その模範は大人が考える模範で、私の考える模範的な大学生ではないのだ。こうもっと、なんと言うか、桃色の波に乗る、それが模範的な大学生なのだ。なに真面目に授業に出ているんだよ、なのになんで寝坊して卒業式だけ行かないんだよ、俺。

ということで、私の最初のモテるための施策「美大に行く」は失敗に終わった。全くモテなかった。よく考えてみるとゴッホの絵が好きだったと書いたけれど(卒業してからしばらくしてオランダまでゴッホの絵を見に行ったこともある)、ゴッホは生涯未婚だった。この施策はスタートから間違っていたのかもしれない。

ただ脳汁は出まくった。モテるだろうと365日3年間もデッサンを続けたので脳汁が出ていないわけがない。その結果、私はモテることに脳汁を出し続けたいと思い、この後もいろいろなモテるための仮説を立て実行していく。問題は今も私は未婚なことだ。

みなさんが私の失敗から学ぶことがあればいいけれど。

歩道でジャンプしている男性

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モテるための挑戦は続く!

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