サボテンと和解しよう! 「サボテンでも枯らす」あなたへ
偏愛・脳汁を語るサイト「ヲトナ基地」では、多数の「愛しすぎておかしくなるほどの記事」をご紹介してまいります。 ヲトナ基地で今回紹介する記事は「サボテンと和解しよう! 「サボテンでも枯らす」あなたへ 」。まくるめさんが書かれたこの記事では、サボテンへの偏愛…!? サボテンとの和解について語っていただきました!
「自分はサボテンでも枯らしちゃうから」
植物を育てている、サボテンを育てているなどと自己紹介すると、しばしばこう言われることがあります。要するに「自分はサボテンのような丈夫な植物でも枯らしちゃうから園芸は無理」というような意味でしょう。
単に謙遜で言われている方が多いかもしれないですが、同時に、サボテンを枯らしてしまって園芸に苦手意識を抱く人というのはけっこういるのかもしれないな、とも思っています。わたしはこの記事で、そんなみなさんにサボテンと和解してほしい、と願っています。
まず、安心していただきたい。
サボテンを枯らすのは普通です。
園芸家でも枯らすときは枯らす
まず、植物を枯らしてしまうこと全体についてお話しします。枯らすとショックを受けるかもしれませんが、栽培で植物が枯れるのはある程度仕方のないことです。というか普通です。
サボテンに限らず、たくさん植物を育てていて、いかにも園芸が得意そうな人でも、そうなるまでにたくさん枯らしているものです。というか、うまい人だってプロだって、枯らすときは枯らします。
私が植物を栽培し始めたのは小学生のときです。学校に生えていたオシロイバナの種を持って帰り、家に撒きました。初めてサボテンを育てたのは中学生のころ。それ以来、もう山ほど枯らしています。今でも失敗しまくりです。
ステキに見える庭を管理している人でも、というかステキに見えるほど、裏では死屍累々というものです。というか、ぶっちゃけ、だいたいの庭は、その庭と持ち主の元でたまたま生き残った植物で構成されています。
植物が所狭しと並んでいる栽培家のお宅などを訪れると、こう、いかにも「この人は栽培がうまくてまったく枯らさない」ように見えて、魔法使いみたいに感じられますが、幻想なので安心してください。単にその人のところで植物が枯れても、もともとの植物量が多いので空いたスペースをすぐ別の植物が穴埋めするだけです。
ここで、ひとつヒントが得られました。
だいたい植物の栽培にチャレンジする人は、少数の植物、場合によっては一鉢一株などから始めますよね。これはよくありません。枯らしたときのショックがでかいからです。なので、最初から5とか10とかで始めるといいと思います。
最初から何鉢もあると、枯らしたときも「くっ、○○がやられたか……」ぐらいの感情移入で済みます。そのぐらいがちょうどいいのです。
園芸界の初見殺し、サボテン
さて、サボテンの話に戻します。
サボテンというと「世話いらずで丈夫」というイメージを持っている人が多いと思います。
えーとね。ウソです。
まずサボテンは世話いらずかというと、たしかに剪定は基本ありませんし、肥料も水も要求量は少ないです。しかし、植物の世話というのはそれだけではありません。植え替えなんかは普通の植物より面倒ですし、肥料も水も、要求量が少ないということはあげ過ぎを避けなきゃいけません。
そんなわけで、世間のイメージにはかなり反しています。むしろサボテンは「サボテン特有の栽培のやり方」を知らないと高い確率で枯れると言っていいでしょう。なのでそれを知る必要があります。
もっとも「世話をせずに窓辺でほっとく」ということなら、サボテンはかなり長期間その状態で生きてますから、そういう意味では世話いらずかもしれません。そういう消費の仕方も否定はしません。栽培とは呼ばないというだけです。
テレビゲームなどでは、何も知らない状態で遭遇すると必ず引っかかってしまうような罠などを初見殺しと呼びますが、サボテンは園芸界の初見殺しと言っていい面があります。
とくに初心者がサボテン栽培でやりがちな失敗は以下のパターンです。どうです? もし「これ私のことだ……」ってなったらぜひコメントをお願いします。
【↓サボテン初見殺しパターン↓】
・水のやりすぎで腐らせる(普通の植物と違い、土が常に湿っている必要はないです)
・サボテン用でない普通の土に植えちゃって腐らせる
・植木鉢を皿の上に置いて水をためるなどして、鉢の底の穴をふさいでしまい腐らせる(観葉植物のありがちパターン)
・光が足りなくて変な形に伸びてくる(徒長)
・ベランダに置いていて真夏の灼熱のベランダ(触れないぐらい熱くなるあれ)で焼殺してしまう
・水がいらないと思って放置→普通に死
・水をちびちびあげて根に届かない(水やりはあげるときは底からダーッと出るぐらいあげるのが基本です。初心者は量が少ないことが多いです)
・最初は元気だが、世話いらずだと思って植え替えをずっとしないでいたら何年目かで突然死
・おばあちゃんが味噌汁の具にした
このように、サボテン栽培は意外なトラップに満ちています。
サボテンによくある誤解
まず、サボテンというものはどういうものか、ざっくりと説明してみましょう。多肉植物全般をサボテンと俗に呼ぶことがありますが、正確にはサボテンはサボテン科の植物を指します。そしてサボテン科は1000種を超える大グループです。まずこれを念頭においてください。
そして「サボテンは砂漠の植物」というイメージがあるでしょうが、これも誤解というか、あまり正確ではない理解のひとつです。
サボテンは確かに乾燥した環境に適応した植物ですが、乾燥した環境にもいろいろあります。いわゆる砂漠のほかにも、乾燥しているが草は生えているような環境や、山岳地帯もあります。また、森林性サボテンと呼ばれるもう少し普通の植物に近いタイプもあります。
なにが言いたいかというと、一口にサボテンといっても、種類や野生での生活環境がさまざまなんですね。なので「サボテンはこう管理すればOK」みたいなことはあまり言えないのです。
先に書いたように「10株とか買って、枯れても気にせずに続ける」というのも、別にでたらめにそう言っているわけではありません。そういうやり方をすると、あなたと相性のいいものが見つかる可能性が高いというのもあります。
ただ、上記のような点があるとしても、サボテン栽培一般としてまず言えることは「普通の植物のような管理ではなく、サボテン用の管理をする」ということです。ここでいうサボテン用の管理とは、だいたい以下のようなことです。
・通気性がよく水はけのいい用土(昔は砂が使われていましたが、最近は粒状培養土が主流)
・成長期(春~初夏と秋、種類にもよる)にあわせた水やり。
・適度な光、風通し
サボテンと和解するために
さて、本当なら、この記事だけで「サボテン栽培のすべて」が説明できたらいいのですが、そうもいきません。字数的にも内容的にも難しいというのがありまして、この記事ではあくまでサボテンを枯らしてしまった人に「よくあることですよ」と、気持ちを楽にしていただき、場合によっては再挑戦してもらいたい、という内容になっております。
そして、もしサボテンをふたたびお迎えする機会があったら、図書館などで流し読みでもいいので、一度サボテンの本を読むことをおすすめします。記事で「本読め」というのもアレかもしれませんが、上記のこともありますし、そうやって知っていくことも園芸の楽しみのひとつだからというのもあります。
初心者におすすめの本は「NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビNEO 多肉植物 サボテン」か「サボテン&多肉植物 NHK趣味の園芸 新園芸相談10」です。NHKはなんだかんだこういう文化事業では頼りになると言わざるを得ません。
オシャレな栽培法やかっこいい写真が豊富な本もありますが、中には栽培法にさほどページを割いてない本もあります。初心者の方は思想的な理由がなければNHKがよろしいかと思います。
まとめとおまけ
今は観葉植物ブームですが、逆にいえば、それだけ初心者が多く、苦い思い出も多くなる時期かと思います。
植物は、いろいろな形で一生興味を持ち続けられる趣味です。なので一過性のブームで終わらせず、長く楽しんでいただけるように、あえて「枯らしてもよくあることなんだよ」というスタンスで書いてみました。
最後におまけとして、以下に初心者におすすめの種類のサボテン・多肉植物のグループを、個人的に、いわゆる独断と偏見でピックアップしてみました。基本的に園芸店で安く小さい苗を売っているようなタイプはとっつきやすいものが多いので、そういうものから見た目でピックするのがおすすめですが、品種も知っておいて損はありません。
再挑戦なさる方は参考にしてみてください。
おまけ1 初心者向けのサボテンの種類・グループ
1:クジャクサボテン類
説明:花を観賞するサボテン。いろいろな品種があります。性質としては普通の植物とサボテンの中間ぐらいで、普通の植物に慣れている人はとっつきやすいでしょう。さし木しやすいので、失敗してもさし木で再生しやすく、全部ダメになりにくい。また、室内栽培に向いています。ほかのサボテンより日陰に強いです。
2:柱サボテン類
説明:柱サボテンは育てやすいものが多いです。いったん根付いて環境に慣れるとかなり雑な扱いにも耐えるときがありますが、ぐんぐん育つようになるまではちゃんと大事にしてあげましょう。品種としては「竜神木」が定番品種で、外見もよく性質も素直です。
3:マミラリア属
説明:球形サボテンの中でも普及しているものが多く、百円ショップなどで売っています。幾何学的でかわいい形が魅力のグループです。最初は「○○属」と言われても「なにそれ?」となるかもしれませんが、慣れるとなんとなくわかります。種類が多いですが、白い綿毛を持つ「玉翁」などもふもふの外見がかわいいものが多いです。
4:ギムノカリキウム属
説明:上に同じで普及しているものが多く、種類も多いです。コレクター的な楽しみ方をしたり、個体差を楽しんだりする人も多いです。「聖王丸(ペンタカンサ)」や「天平丸」などはとっつきやすいです。またトゲをよけて掴みやすいものが多いので、意外と取り回しやすいです。外見が驚くほどきれいな改良品種もあります。
5:ランポー玉
説明:アストロフィツム属というグループのサボテンです。アストロフィツムには「兜」という、これだけを専門に育てる人もいるいわゆるマニア向けのサボテンがあります。ただ「兜」はちょっと繊細なところがありますのでここでは置いておきます。
一方でランポー玉はそれより育てやすく、トゲがなく、価格も安く買えるのでおすすめです。ネジラミという害虫に弱いので、そこだけ気をつける必要があります。植え替え時に根を容赦なく切って乾かすのがコツです。
おまけ2 初心者向けの多肉植物の種類・グループ
1:ユリ科の多肉植物(アロエ属・ハオルチア属)
解説:全体的に性質が素直で、初心者向けです。安い品種はほぼ難しくないと言っていいでしょう。とくに多肉植物の水やりの感覚をつかむのに向いています。なぜなら水が足りなくなってくると露骨にしぼむからです。
アロエなら観賞用のハイブリッドもだいたい丈夫です。とくに名前のないハイブリッド品種の苗のほか「クリスマスキャロル」などの品種名のついた苗もあります。ウルトラ怪獣みたいなすごい外見のものもありますが、初めは惜しくない金額のものからやってみましょう。
ハオルチアでは「オブツーサ」は外見が綺麗なのに丈夫でおすすめです。直射日光より明るい窓辺のような環境に向いていますので、街の生活にも合います。これに関しては、水やりは「なんかしぼんだら」でもいけます。
2:サンスベリア
解説:サボテンの記事でこれを書くのもどうかと思いますが、世間の園芸に興味がない人がサボテンに期待するものを全部持ってるのはたぶんサンスベリアです。
もちろん、うまく育てるにはちゃんとサンスベリアに向いた育て方をする必要はありますが、それはそれとして合わない環境でもなんかしぶとい。観葉植物界のジャガイモと言っていいかもしれません。
おすすめの品種は断然「キルキー・コパトーン」です。大理石のような肌の葉を持つ品種です。以前は希少でわりと高かったのですが、最近は普及しているのか安く買えることもあるので、普及を見越しておすすめしておきます。
3:カランコエ属 「月兎耳」
解説:名前負けしないファンシーな外見です。園芸界のシルバニアファミリーです。カランコエ属は丈夫な多肉植物が多く、有名なものだと「金のなる木」の別名で売られている「花月」などが属するグループです。外見が魅力的なものは育てにくいことが往々にしてありますが、月兎耳は初心者向けです。値段も安く安心です。
\ よかったらこの記事をシェアしよう! /