萌えきのこ【キヌガサタケ】
こんにちは。きのこが好きで好きで好きすぎて、ついには日本唯一の「きのこライター」になってしまった堀博美です。どうぞよろしくお願いします。
きのこの時代、到来
きのこ歴約30年の私から見て、今、きのこはいい感じで来つつあると思います。
従来通り風味・栄養の面から注目されるのは言うまでもなく、さらに「分解」「共生」といった自然界での重要な役割も知られるようになりました。
一方で「かわいい」「きれい」「ゆるキャラみたい」という見方もされるようになり、このごろの雑貨ブームとも相まって、きのこモチーフのグッズをよく見かけるようになりました。
私がきのこにハマった当初、きのこグッズは世の中にほとんどなく…。しかし何度か到来した「きのこブーム」のおかげで、かなりのきのこグッズが作られるようになりました。
目につくと当然買ってしまうことから、今や私のきのこグッズやきのこ服は博物館・植物園などから貸してくれと頼まれるほどになりました。きのこ服というのはきのこ柄の服全般です。なお、着ぐるみは専門外です。
近年では、きのこイベントなるものも開催されています。代表的なのが全国的に開かれる「きのこ大祭」。きのこを『見る!食べる!愛でる!』とのキャッチフレーズで、きのこ好きの、きのこ好きによる、きのこ好きのために開かれているお祭りです。
主に教育的な展覧会である「きのこ展」も、全国の植物園や博物館などで行われています。
グッズじゃない、生きたきのこに胸高鳴る
でも、やっぱり、野山に生える生きのこは特別。出会った時の胸の高まり。ときめき。ああここに居てくれた、という安心、満足。居てくれると感じるのは、きのこが生き物だからでしょう。きのこは動物でもない、植物でもない、菌類という生き物なのです。
きのこは世界中に15万種あるだろうと言われますが、名前がついているのはごく一部。(現在、DNAによる新種の発見が相次いでいるので、段々とわかりつつあるかもしれません)そんな奥深い世界なのも魅力的です。
「これはぜひ、そっと触れ合ってきのこを知ってほしい!」という思いから、同人誌やサイトなどできのこについて発信するようになりました。同行した友人を次々と沼らせたりもしています。そうする内に、いつの間にかプロのきのこライターになっておりました。まあ今のところ、他にいないわけですが……。
さて、今回は「キヌガサタケ」の魅力について語ります。6月の代表的なきのこということからのチョイスです。
いきなりキヌガサタケと言われても何のことやらかもしれませんが、こんなのです。
きのこの女王、キヌガサタケ
「これ、きのこなの?」という声が聞こえてきそうですが、間違いなくきのこです。
主に竹林で、清純な感じの美しい姿をしてたたずんでいます。特にふわっと広がるレース(菌網)の部分がいい感じです。白い足(托)の透け感がたまりません。これは間違いなく萌えきのこです。レースの穴が泡状の形をしているのも、美しさの秘訣でしょう。「きのこの女王」と呼ばれるにふさわしいきのこです。
黒っぽい部分の表面についているのは、グレバという、胞子が液体になったものです。これがまた臭い。「腐肉の匂い」と表現する人もいます。これでハエなどの虫をさそい、グレバごと運んでもらうのです。実は誘惑の匂いです。
頭のてっぺんの目みたいなのも、何のためのものか分かりませんが、キュートです。
1本でもこんなにかわいいのに、群生なんかしている日にはもう、たまりません。ああ、かわいすぎる……どこを見て良いやら、目のやりどころに困ります……。
なお、中華料理では高級食材として珍重されているきのこでもありますが、特に味はなく、シャキシャキとして歯応えが良いです。けれど日本では多くの地域で希少なので(レッドデータブックに載っている県も)、あまり採らずに愛でて欲しいところ。
似て、非なるきのこ
ちなみに、「スッポンタケ」というきのこがあります。
学名がファルス・インプディクス(恥知らずな男根)という、何というかそのまんまな名前です。ダーウィンの娘はスッポンタケが大嫌いで、見つけ次第焼かせたとか。
キヌガサタケも、レースがなかったらスッポンタケそのものなのですが、この扱いの違いは何でしょう。味もだいたい同じなのに。人間ってものは、どこまでも見かけに左右されるものなのでしょうか。
そもそも、キヌガサタケにはなぜレースがあるのかも分かりません。人間の美の尺度に合わせたわけでもないでしょうに。
レースが白だから萌えなのか、というとそういうわけではなく、例えば「ウスキキヌガサタケ」というきのこがあります。宮崎県で標本を見せていただいたことがあるのですが、まだ生きているものは見たことがありません。写真はネットの無料素材から借りました。
これはこれで南国フルーツ的なビタミンカラーの色味で良いですね。(フルーツじゃないけど)見ると元気が出そうです。
いつか自生しているところを見たいなあ……。
キヌガサタケへの熱い想い
でも、キヌガサタケに対する想いは消えることがなく、見るだけで眼福です。ありがたいことです。
幸いにも近所にキヌガサタケが生えている場所があるので、毎年6月には見に行くことにしていました(場所によっては9月ごろに生える場合もあります)。
ところが昨年……。
その竹林に、大々的に「立ち入り禁止」の看板が出てしまいました。
たけのことキヌガサタケのどちらを守っているのか、あるいは両方か……山でのきのこ観察は私有地に入らないよう、注意が必要です。
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